愛溺〜番外編集〜
「中学の時もあまり変わらなかったかな。
好かれてた方が楽なこともあったし」
「……やっぱり」
「えっ?」
「愛佳が誰にでもいい顔するから気に入られるんだよ?」
素直に答えただけだというのに、なぜかため息を吐かれてしまう。
何か気に食わない回答でもしただろうか?
「話聞いてた?好かれた方が…」
「そのせいで懐かれてるんだよ?」
何を言っているのか、まったくわからない。
首を傾げれば、またため息を吐かれてしまう。
「な、なんでため息ばかり吐くの」
「愛佳が鈍感だから」
「ど、鈍感じゃない!」
私はひとつも悪くないというのに、そんなひどい言い方して。
わざと涼介から顔を背け、怒ったというアピールをする。
「かわいい怒り方だね?」
「本気で怒ってるんだから!」
「でもちゃんと体に覚え込ませないといけないかなぁ」
「は?何言って…」
「愛佳は俺のだよってこと」
耳元で囁かれ、思わず肩がビクッと跳ねる。
今日の涼介はいつもと様子がおかしい。
けれど理由がわからないまま、涼介の家に着いてしまう。
嫌な予感を胸に抱く中で家に上がったけれど、どうやら違和感は気のせいではなかったようで───
「おいで、愛佳」
リビングに通されてひと息つく間もなく、涼介に誘われてしまう。
優しい笑みを浮かべる彼が少し怖かったため、距離をあけてソファに腰を下ろすと、そばに寄るように声をかけられたのだ。
「……嫌だ」
「どうして?
せっかくふたりで過ごせる貴重な時間なのに」
「うっ…」
それはそうだけれど。
恐る恐る涼介の方を向く。
「乱暴にしない…?」
「どうして愛佳を乱暴に扱うの?」
「だって…」
体に覚え込ませるとか言うから。
こんなにも不安になるのだ。