愛溺〜番外編集〜
③後輩の本音
体育祭が近づいてきた放課後のグラウンドは、多くの生徒たちで溢れ返っていた。
「うわ!またタイム伸びてる!」
その日は各種目の練習ということで、私はリレーの練習をしていた。
沙彩の出る個人種目は綱引きらしく、本番勝負のようでタイムを計測してもらっていた。
1クラス男女ふたりずつ、合わせて4人がリレーに参加するのだが、私もその一員になれた。
もちろん男ふたりのうち、ひとりは瀬野である。
もう一人は───
「俺たちの友情パワーのおかげだな!」
こちらも2年に引き続き同じクラスになった真田が、そのもう一人であった。
「何が友情パワーよ。女の私たちが優秀だからに決まってんでしょ?ねぇ、愛佳ちゃん」
そんな真田の言葉を冷たくあしらったのが、ショートカットで現役陸上部の本庄由依ちゃんだった。
彼女はもう一人のリレー参加者で、私よりも足が速い。
「う、うん…」
仮にも4人の中で一番足が遅いのだから、私は強く言えない。
けれど───
「ああ、本当に愛佳ちゃんは綺麗だわ。このスベスベな肌に整った顔立ち。いつまでも見てられる」
そんな由依ちゃんは少し…いや、かなりの変人であった。
何でも美女やかわいい子には目がないらしい。
そして私のことは、3年で同じクラスになる前から目をつけていたようだ。
今だって私の顔をうっとりと見つめてくる。
さらに現役陸上部ということで鍛え上げられた肉体を前に、私の力は敵わないため、彼女を押し退けることができないのだ。
「髪もサラサラで素敵ね。
この黒髪がさらに愛佳ちゃんの清楚感を…」
「本庄さん、あまり俺の彼女を困らせないであげて」
固まる私を助けてくれたのは涼介だった。
後ろから私の肩に腕をまわし、自分の元へと引き寄せてきたのだ。