愛溺〜番外編集〜
「……涼介」
「ふたりの仕事はもう終わったよね?」
「うん、涼介は今から?」
「そうだよ。でも少し早く来すぎたみたいだね」
涼介は依然として穏やかな口調だったけれど、その笑顔は偽物っぽい。
「じゃ、じゃあ私は戻っ…」
「愛佳」
これをチャンスだと思い、その場を立ち去ろうとしたけれど。
涼介に阻まれてしまう。
「な、なに…」
嫌な予感がした時にはもう遅かった。
涼介の片方の腕が私の肩に回されたかと思うと、グッと抱き寄せてきたのだ。
「り、涼介…っ!?」
それだけで終わるはずがなく、突然首筋にキスを落としてきた。
「待っ…何して」
「その髪型だといつもより首が露わになるから、噛みつきたくなるんだよね」
「だからってどうしてここで…んっ」
目の前に寛太がいるというのに、今度は唇を塞がれてしまう。
恥ずかしい、こんなところで本当に何をしているの。
こんなにも大胆な行動を起こす涼介は初めてで、戸惑ってしまった。
「樋口寛太、だっけ?
俺の愛佳に許可なく迫らないでくれるかな?」
寛太に私の顔が見えないよう、抱きしめられたのが唯一の救い。
恥ずかしくて寛太の顔をまともに見られない。
追い討ちをかけるような涼介の言葉に、私の心臓はうるさく鳴り響いていた。