愛溺〜番外編集〜
「え、あの…ふたりは神田くんとどういう関係ですか…?」
何も理解していない未央ちゃんが、不安そうに顔を見上げてきた。
私たちのことは何も知らない様子。
「敵対関係にあるんだ、君の男と。仁蘭と雷霆、それから煌凰って名前を一度でも聞いたことない?」
「……あっ…」
涼介の口にした族名に聞き覚えがあったようで。
途端に彼女の表情が強張るのがわかった。
「困ったな、彼女を連れ去ったと勘違いされないといいけど」
涼介は怯える未央ちゃんに触れることはせず、むしろ刺激しないように距離をあけた。
「でもまあ、本当に拐うつもりはなかったから安心して?愛佳の優しさで君をここに連れてきただけだよ」
「……本当?」
不安な表情を見せる未央ちゃんが、徐々に落ち着いていくのがわかった。
「ほ、本当だよ…!まさか未央ちゃんが繋がっているとは思いもしなくて…危害を加えるつもりなんて一切
ないよ!」
慌てて誤解を解くと、私の言葉を信じてくれた未央ちゃんがホッと息を吐いた。
「でも、どうしたらいい…?
このままだと天帝の総長が…」
早く家に帰した方がいいのではないかと思ったけれど、未央ちゃんはまるで帰りたくないかのように私にピタリとくっついてきた。
かわいい、本当にかわいい。
思わずギュッと抱きしめてしまう。
「ねぇ涼介、やっぱり未央ちゃんを放っておけない」
「……っ」
何かいい案はないかと思い、助けを求めるけれど。
涼介は私から視線を背けてしまう。
つまりダメだということだろうか。