愛溺〜番外編集〜
「涼介…」
「とりあえず今日は仕方がないね。
でもちゃんと話さないと解決しないこともあるから」
確かに涼介の言う通りだ。
けれど今はまだ刺激しない方がいい。
「未央ちゃん、今日はとりあえず私の家に泊まる?
落ち着いてから、また案を考えよう」
「……いいの?」
「気にしないで。今の未央ちゃんを放っておけないから」
「ありがとう」
ふわりと笑う未央ちゃんに、先ほどから心臓が痛い。
このかわいい生き物は何なんだ。
「何この天使…かわいい」
再びギュッと未央ちゃんを抱きしめる。
すると涼介から視線を感じたため、顔を上げると彼は不満気に私を見つめてきた。
もしかして涼介も未央ちゃんのかわいさに惹かれたのだろうか。
少し不安を抱いてしまう。
けれど私なんかよりもずっと未央ちゃんの方が女の子らしくて、かわいくて。
私に勝ち目なんてない。
もし涼介が未央ちゃんを気に入ってしまったら───
その時、誰かのスマホが音を立てた。
何やら嫌な予感がする。
「……非通知の電話だ」
涼介の落ち着いた声が届く。
どうやら彼のスマホに電話が入ったらしい。
「なんだか嫌な予感がするね」
「……うん」
涼介は真剣な顔つきで電話をとった。
ゆっくりとスマホを耳に当てる。
「───はい」
私と未央ちゃんは、涼介が電話をしているところをじっと見つめる。
大丈夫だろうか、少し心配だ。
「意図はないよ。
連れ去ったなんて人聞きの悪い」
「…っ」
話の内容からして、恐らく相手は天帝の者だろう。
こんなにも早く行動を起こしてくるとは。