愛溺〜番外編集〜
「じゃあ彼女の声でも聞く?
無事を確かめたいんだよね」
すると涼介はスマホを離し、未央ちゃんに差し出した。
「神田拓哉からだよ」
やっぱり天帝の総長からだった。
未央ちゃんは悩んだ末、スマホを受け取った。
「……もしもし、神田く」
けれど未央ちゃんは電話を取るなり、ビクッと肩を震わせた。
どうやら怯えている様子。
相手は怒っているのだろうか。
わからないでいると───
「む、無理して私と付き合わなくていいんだよ…!神田くんと見合わないことぐらいわかってる、から…!」
未央ちゃんが少し大きめの声を上げ、そのまま電話を切ってしまう。
さすがに私も涼介も戸惑ってしまった。
「うー…」
「あ、ほら…泣かなくていいんだよ未央ちゃん」
泣くのを必死で堪えている未央ちゃんを慌てて慰める。
とにかく相手の男が好きだという気持ちは、よく伝わった。
未央ちゃんが落ち着いたところで、簡単にご飯を作り、3人で食べる。
いつもと違う感じに気まずさもあったけれど、時間が経つにつれて緊張感は薄れていった。
「本当に愛佳は困ったことするね」
「うっ…」
未央ちゃんがお風呂に入り、私と涼介が部屋でふたりになると、彼は早速私に不満をぶつけてきた。
未央ちゃんの前ではニコニコ笑っていたけれど、やはり怒っているようだ。