愛溺〜番外編集〜
どうしよう、家を特定された。
早く涼介に知らせないと───
「大丈夫」
「え…?」
「すでに話は済ませてあるから」
固まる私のそばにやってきた涼介。
優しい笑みに心が落ち着く。
どうやらモニターに映る相手…神田拓哉が来ることを知っていたようだ。
「でも、未央ちゃんは…」
「不安になっているなら、安心させてあげないと」
確かに涼介の言う通りだ。
このまま会うことすら拒否していると、不安は解消されない。
「……うん。
でも心配だから家に上がってもらって良い?」
ちゃんと話し合いの場を設けてあげないと。
どうなるかわからない。
「本当に愛佳ってお人好しだよね」
「うっ…」
「まあ、俺も相手と色々話したいことがあるから」
涼介は依然として落ち着きがあり、いつもと変わらない様子に安心感を抱いた。
私は決心をして、そのドアを開ける。
「突然すみません」
「…っ、未央ちゃんに、会いにきたんですか…」
相手は丁寧な口調だったけれど、何とも言えない圧が恐怖心を駆り立てられる。
「はい、未央を預かっていると聞いて…迎えに来ました。昨日、未央を男から助けてくれてありがとうございます」
ああ、相手の感情が全く読めない。
頭を下げて感謝の意を示されるけれど、結局男たちを追い払ったのは彼自身だ。
「家に上がってください」
「……え」
「未央ちゃんが中で待ってます」
けれど今、彼の目的である未央ちゃんは家の中にいるのだ。
逆らえないだろう。
「……迷惑かけてすみません」
とても同い年だと思えない。
本当に彼が高校生なのだろうか。
仮にも敵の女の家だというのに、彼が躊躇う様子はなかった。
涼介と同様、常に冷静なタイプだろうか。