愛溺〜番外編集〜



結局未央ちゃんは彼の前に座らされ、後ろから抱きしめられていた。

恥ずかしそうにする様子が何ともかわいくてたまらない。


「愛佳の頬が緩んでる」
「え、あっ…だってかわいくて」


幸せなふたりを見ていると私まで幸せな気持ちになる。

けれど涼介は不服そうだ。
他人の幸せを見て喜ぼうと思わないのか。


「本当にありがとう、未央を家に泊めてくれて」


ふたりは仲直りしたようで、神田が嬉しそうに笑う。

あの怖さはどこから来ていたのだろうかと思うほど、不思議で仕方がない。


「あのね、愛佳ちゃんと瀬野くんが…すごく優しくしてくれて。でも、本当に二人と敵対してるの?」

「……っ」


心配そうに神田を見上げる未央ちゃん。

どうやら彼は、未央ちゃんに弱いようで。
素直に敵だと言えない様子だった。


「敵対してるよ」
「え…」


言葉に詰まらせていた神田を見て、涼介がその質問に答えたのだ。

途端に悲しそうな表情をする未央ちゃん。
涼介に何で素直に答えるんだと怒りたくなった。


「でも、これを機会に仲良くなるのも夢じゃないと思うな」

「ほ、ほんと…!?」


ああ、これは涼介の作戦だったのか。
ある意味、未央ちゃんを利用しているのだ。

涼介の言葉で嬉しそうな表情へと変わる未央ちゃん。


「そうだよ」
「どうしたら仲良くなれる…?」

「同盟を組むんだ。天帝と、俺たち3つの族が」
「どう、めい…」


神田ではなく、未央ちゃんとふたりで話を進める涼介。

乗り気である未央ちゃんを前に、神田は何も言えない様子だった。

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