愛溺〜番外編集〜
「未央がこんなにも懐くなんて珍しいね」
「愛佳ちゃんと仲良くなりたいなぁ」
こんな満面の笑みを浮かべられて。
その気持ちに応えるしかない。
というより、癒される存在を簡単に手放してたまるか。
最初はどうなることかと思っていたけれど、天帝と喧嘩をすることなく、上手くまとまりそうだ。
どちらも冷静沈着という似たようなタイプのため、逆に上手くいったのかもしれない…なんて。
ただの憶測に過ぎないけれど。
「じゃあね、愛佳ちゃん。
本当に迷惑かけてごめんね、ありがとう…」
「ううん、気にしないで。
むしろ未央ちゃんと出会えて良かった」
帰り際、玄関前で一度未央ちゃんをギュッと抱きしめる。
すぐに抱きしめ返してくれたため、このまま家に置いときたくなるけれど。
「未央、行くよ」
その気持ちがバレてしまったのか、神田に未央ちゃんを奪われてしまう。
「あ、じゃあ行くね…また愛佳ちゃんに連絡してもいい?」
「うん!いつでも連絡してきてほしいな。
何なら明日にでも会いたい」
「わ、私も会いたい…!へへ、嬉しいな…そうだ、静音ちゃんにも会ってほしいな」
「静音ちゃん?」
「うん…!もうひとり、静音ちゃんって子がいて…」
なるほど。
未央ちゃんは静音ちゃんという人物に懐いているようだ。
女の勘だけれど、その人物とも仲良くできそうな気がした。
「───あ、そうだ」
未央ちゃんとの会話を終えると、神田が振り返って涼介を見た。
「これは誘いなんだけどさ…君、神田組に入らない?」
ドクンと、心臓が大きな音を立てた。
先ほどまでの明るい気持ちが、瞬く間に消えていくのがわかる。
今、神田はなんて───?
「“昨日”の君を見て確信したよ。
瀬野涼介、能力高い君に今の世界は狭すぎる。
すぐに上へあがれると思うよ、今の実力で十分。
同盟を組んだなら、尚更今すぐ入ってほしいな」
嫌な汗が流れる。
涼介が、今よりもずっと闇深い場所に行く?
そんなの嫌だ。
危険な場所であることは、考えなくともわかる。