悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
前を向くには

 医務室に運ばれたジョシュアは、一番奥のベッドに運ばれた。

「みんな、出ていって」

 大勢がマスクもキャップもないまま見ていては、この場が不潔になる。

 アリスはルーク以外の者は部屋の外に出るように指示し、仕切りのカーテンを閉めた。

「どうする?」

「見よう見まねだけど、静脈瘤の止血をしてみるわ。台車を持ってきて、このカーテンの中全体を滅菌してくれる?」

「わかった」

 ルークが台車を持って戻ると、カーテンの隙間から光が漏れていた。アリスが処置に必要な物品を召喚したのだと悟る。

 彼がカーテンの中に入るなり、サージカルマスクが手渡された。素早く装着し、部屋全体を魔法で滅菌する。

「私の手元をずっと照らしていて」

「わかった」

 彼女は台車の上に、ルークが見たこともないような器具を並べた。

「この内視鏡を口から入れて、瘤に硬化剤を注射するわ」

「……ないし……? う、うむ。任せる」

「成功の保証はないわよ。私も初めてだから」

 亜里は病棟看護師だったので、内視鏡へ患者を運んだことは腐るほどあるが、医師の手技を見学した回数は数えるほどしかない。あとは教科書で手順を学んだくらいだ。

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