悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
(さすがに、亜里でもやったことがないことは手が震える)
本来なら医師と助手と二人でやる作業を、アリスはひとりで続行する。
静脈瘤にスコープが届いた。緊張しつつ、慎重に出した針を刺す。
更に目を見開き、瘤の中まで針が届いたか確認し、硬化剤を注入した。
一度目を閉じたら集中が途切れてしまいそうで、彼女は瞬きすら躊躇った。
慎重に慎重に、同じことを複数の瘤に繰り返す。最後にゆっくりと、スコープを抜いた。
かかった時間は一時間ほどだったが、アリスにはもっと長い時間格闘していたように思えた。
額から滴る汗を拭いていたらくらりとめまいがして、その場にうずくまった。
「大丈夫か?」
「うん……ちょっと疲れたみたい」
召喚スキルを使った後での透視スキル一時間連続使用。加えて、慣れない内視鏡スコープの先につけた注射針の操作。疲れても無理はない。
処置は成功したと思われた。安堵したアリスから、深いため息が漏れた。