悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「あんたたちが副長に酒を届けようとするからじゃないか。今は禁酒が必要だって、お妃様が言ってた」
「酒の量を減らしてすぐ、副長はおかしくなった。今もあの女に何をされているか……もしかしたら毒薬を飲まされていたって、わからないじゃないか。自分に反抗する者を消す、いいチャンスだ」
アルコールからの離脱症状というものをわかっていない取り巻きは、アリスのせいでジョシュアがおかしくなったと思いこんでいた。
もともとルークとジョシュアの仲は悪く、アリスのいうことも聞かなかったので、彼女たちがすんなりとジョシュアを助けてくれるとは思えないらしい。
「お妃様がそんなことするはずないだろ! あの人は俺たちのために力を尽くしてくれているんだ!」
「バカは単純でいいな。そうやって女狐に飼いならされていろよ」
バカと言われた若者は、「むきーっ」と言葉にならない声を漏らし、勢いよく手を伸ばした。
その手は取り巻きを殴るのではなく、彼の前に置いてあった皿を取り上げ、乗っていた食事を一気に口の中に入れた。
「お前! 何をする!」
もぐもぐと頬いっぱいに入った食べ物を咀嚼しつつ、若者は反論する。