悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
医務室では、ジョシュアがゆっくりと目を覚ますところだった。
昨夜処置のあとで覚醒した彼は、問われるままに自分の名前を答え、また眠りについてしまったのだ。
「……う、ん……?」
取り囲む清潔なベッドやカーテンに見覚えがなく、彼は戸惑う。起き上がろうとしたとき、カーテンが揺れた。
「あ、ダメよ。腕に点滴が付いてるから、曲げないで」
カーテンの中に入ってきた女性が、一瞬知らない女に見えた。見たこともない素材の服を着た、黒髪の二十代中ごろの女性だ。
瞬きをすると、彼女はプラチナブロンドとアイスブルーの瞳を持った、甥の妻に姿を変えていた。幻だったのかと、彼は瞬きを繰り返す。
冷たそうな見た目のいけ好かない小娘は、台車にたらいを乗せてきた。
「体拭きをするわ。そのままにしておいて」
そう言うと、アリスはジョシュアの布団を剥いだ。彼が驚いているのも気にかけず、服のボタンに手が伸びる。
「ま、待て! 何をする、この痴女っ」
さっさと服を脱がせていくアリスに、ジョシュアが暴言を吐いた。