悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 医務室では、ジョシュアがゆっくりと目を覚ますところだった。

 昨夜処置のあとで覚醒した彼は、問われるままに自分の名前を答え、また眠りについてしまったのだ。

「……う、ん……?」

 取り囲む清潔なベッドやカーテンに見覚えがなく、彼は戸惑う。起き上がろうとしたとき、カーテンが揺れた。

「あ、ダメよ。腕に点滴が付いてるから、曲げないで」

 カーテンの中に入ってきた女性が、一瞬知らない女に見えた。見たこともない素材の服を着た、黒髪の二十代中ごろの女性だ。

 瞬きをすると、彼女はプラチナブロンドとアイスブルーの瞳を持った、甥の妻に姿を変えていた。幻だったのかと、彼は瞬きを繰り返す。

 冷たそうな見た目のいけ好かない小娘は、台車にたらいを乗せてきた。

「体拭きをするわ。そのままにしておいて」

 そう言うと、アリスはジョシュアの布団を剥いだ。彼が驚いているのも気にかけず、服のボタンに手が伸びる。

「ま、待て! 何をする、この痴女っ」

 さっさと服を脱がせていくアリスに、ジョシュアが暴言を吐いた。

< 108 / 215 >

この作品をシェア

pagetop