悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「誰が痴女だっ、このアル中!」
くわっと目を見開き、アリスは低い声で怒鳴った。ジョシュアはまたまた驚き、あんぐりと口を開けた。
アリスは昨日から亜里の記憶に頼っていたので、思わず口調まで似てしまったのだ。
「あなたは血を吐いて倒れたの。覚えてないの?」
「あ、ああ……そうなのか?」
「お金がなくて、お酒をやめてたんでしょ。離脱症状で妄想と幻覚に支配されて、完全におかしくなってたわよ」
湯を張ったたらいから布を取り出してしぼり、アリスはジョシュアの体を拭く。
「血液検査や検体検査ができないから、癌かどうかは診断できないけど」
「癌?」
聞きなれない言葉を連発するアリスの方こそ、おかしくなっているのではないかとジョシュアは思う。
「えーっと……すっごい病気かどうかってこと。多分見た感じ、まだ癌にはなってないのよ。でも急性膵炎だし、肝臓も悪いし……とにかくお酒をやめて、ちゃんと薬を飲んで、しばらく療養して。じゃないとよくならないわよ」