悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 ズボンまで脱がそうとするアリスの手を、ジョシュアは咄嗟に止めた。

「い、いい。そんなところは」

「あなたは患者よ。恥ずかしがることないわ」

「お前こそ、恥ずかしくはないのか!?」

「こんなの、見慣れればただのモノといっしょよ。ぽろんとそこにあるだけ」

 下着まで下ろされかけて、とうとうジョシュアは真っ赤な顔で上体を起こした。

「み、見慣れ……⁉ とにかくトイレに行く!」

「行ける? お腹の痛みは?」

「ある……が、問題ない! あとは自分でやるっ」

 点滴があるので腕を曲げないこと、点滴台を忘れずに引きずっていくことを細かく命じられ、ジョシュアは医務室の隅にあるトイレに入った。

 彼にとってみれば、とんでもない屈辱だった。

 このまま老人のように動けなくなり、毎回他人に下を拭かれるのは、絶対に嫌だった。

 トイレを済ませたら、アリスに手をしっかり洗うように指示された。とにかく気に食わない小娘だ。

「しかし、療養とは……無理だな。酒はやめられん」

 意識があるうちに下を拭かれるのは屈辱だが、病気が進めばそれもわからなくなってしまうだろう。

< 110 / 215 >

この作品をシェア

pagetop