悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「どうして?」

「子供にはわからん」

 ベッドに戻り、仰向けに寝転んだジョシュアをアリスは見下ろす。

「どうせ、左遷されて元奥さんに逃げられた憂さ晴らしでしょ」

「なっ……ルークのやつか」

 チッと舌打ちをし、ジョシュアはアリスに背を向ける。

「これもとある人に聞いたんだけど、行きつけの薬屋さんに痛み止めをもらっていたそうじゃない」

「薬屋!?」

「前から痛かったの? それとも、あの綺麗な未亡人に会いたかったの?」

 ジョシュアの額に嫌な汗が流れた。

(取り巻きも一緒に行ったことがないのに、どうしてこの小娘が知っているのか)

 内心焦りまくったが、無言を貫いた。

「言わないってことは、あの人に会いに行っていたのね」

 アリスが得意げに言うので、ジョシュアはまた舌打ちをした。

「体を直しなさいよ。元気になって、人生やり直しましょ。まっとうな人間じゃないと、誰も相手にしてくれないわよ」

「うるさいっ。もう放っておいてくれ」

 背を向けたまま怒鳴ったジョシュアは、ギャアと悲鳴をあげた。アリスが彼の右耳をギュウと引っ張ったからだ。
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