悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
しかしアリスは、態度を一変させ、殺害計画をなかったことにしてしまったのである。
もちろん殺害計画の指示書などはなかった。
冤罪の証拠を作る暇もなく、舞踏会の日を迎えたソフィアは、満足していなかった。
「監獄に入ったあいつを笑ってやるのを、楽しみにしていたのに」
ソフィアはぴたりと足を止めた。
(突然改心したように人助けをし、国王陛下の関心を引くなんて、許せない)
強く握って皺ができたドレスを、彼女はベッドの上に放り投げた。
「まあいいわ。結局あのドブみたいな辺境の地にお嫁にいったわけだし。今頃さぞかし苦労していることでしょう」
自分を慰めるように、鏡に話しかけるソフィア。
彼女は自分が幸せになっただけで全てを許せるような女性ではなかった。
か弱く、優しく、鈍い女を演じていたソフィアを、アリスは亜里の記憶が甦る前から見抜いていた。
見抜かれているという焦りが、ソフィアにアリスをますます嫌悪させる原因となった。
本当の自分を知っている者は、みんないなくなればいい。幸せになるなんてもってのほか。
どす黒い思いを胸に、ソフィアは鏡の中の自分に笑いかける。
「苦労しすぎて、死ねばいいのに。ねっ」
今日も可愛い、私の笑顔。ソフィアはそう思った。
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