悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 ジョシュアはアリスと視線を合わせた。彼女はこくりとうなずく。

 取り巻きたちはしぶしぶ医務室の外に出ていった。

「じゃあ、やるわよ」

 ルークはアリスが指さしたジョシュアの腹の上を滅菌しつつ、彼女の横顔を見つめた。

「無理するなよ」

 もう口癖のようになっている。

「今回はそれほど大変じゃないはず」

 アリスは腹水を抜くため、腹腔穿刺をすることを昨日から決めていた。

 この前の処置と同じく、本来は看護師ではなく医師が穿刺する。エコーで他の内臓を傷つけぬよう確認して針を刺さなければならない。

 ぐっと目に力を込めると、アリスの視界にジョシュアの内臓が透けて見えた。

(大丈夫。亜里は何度も医師の介助をしていたもの。このまえの注射よりは楽にできるはず)

 とはいえ、一歩間違えば針で他の器官を傷つけてしまう恐れがある。

 取り巻きたちの心配はあながち的外れとも言えない。

 アリスは麻酔の注射をしてから、腹腔穿刺針を慎重に皮膚の中へ入れた。

 針に細いチューブを繋ぎ、ベッドの下にある腹水バッグに腹水が落ちていくかを確認したら、処置終了だ。

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