悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「違う違う。そのようなことでは決してないんだ。俺はただ、あなたにちゃんとした格好で一目会っておきたくて……」
「はい?」
女主人が目をぱちくりさせる。ジョシュアは口を押えたが、覚悟を決めて深呼吸した。
「はっきり言おう。俺は親切なあなたに懸想している。だから……自分を変えたいと思ったんだ」
そう思わせたのは、生意気な小娘──もとい、王太子妃・アリスだった。
「もし迷惑でなければ……これからも、たまに寄っていいだろうか」
頬を赤く染めたジョシュアに見つめられ、女主人もまた赤くなる。
「ええ、もちろん。いつでも来てくださいな」
彼女はそっと、カウンターの上に置かれていたジョシュアの手に自らの細い手を重ねた。
「あなたが元気になってくださって、私はとても嬉しいです」
にこりと笑った女主人に、ジョシュアはますます赤くなって何も言えなくなってしまった。