悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「まあまあ。少し休憩にしよう。みんなが死んでしまう」

 ルークが声をかけると、若い隊員たちは「助かったー」と草の上にばたばたと倒れて休憩しはじめる。

「私、飲み物を配ってくるわ」

 アリスはせっせと隊員たちに水を運ぶ。いっぺんに熱中症になられたら、またゆるゆる暮らせなくなるからだ。

「すっかり昔の叔父上に戻られて、俺は嬉しいですよ。薬屋さんの美人にお礼をしたいくらいだ」

「突然なにを言う」

 さらっと恥ずかしいことを言うルークに、ジョシュアは顔をしかめた。

 ちなみにジョシュアと未亡人の間は男女交際に発展したものの、同居や結婚までには至っていない。

 顔に似合わず、非番の日に一緒に薬草を摘みにいくなどして、ほのぼのと愛を育んでいるようだ。

「恋というものは、さぞかし素敵なものなんでしょうね」

「お、お、お前らだって。結婚してからさぞかし親密になったんだろ。え?」

 他の隊員に聞こえないよう、叔父と甥の話し方で会話をするふたり。

< 127 / 215 >

この作品をシェア

pagetop