悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「いや、俺たちは……」

 かすかにルークの顔が曇った。

 彼とアリスは、今だに一緒に眠ったことがない。

 それどころか、抱擁したことも、キスしたことすらないのだ。

「照れるなって。王太子妃はアレも見慣れているって言ってたぞ」

「アレって?」

 ジョシュアはこそこそと、アリスに体拭きをされそうになった時のことをルークに耳打ちした。

「あの時はたまげた。王太子妃ともあろう者が、男のアレを、『ぽろんとそこにあるだけのもの』って言ったからな。今思い出すと笑える」

 思い出し笑いを堪えられず、ジョシュアが噴き出した。

「はははは……。ん? どうした?」

 ひとしきり笑った後、ジョシュアはルークがうつむいているのに気づいた。

「休憩は終わりだ。全員俺にかかってこい」

 顔を上げたルークのオッドアイがキラリと凶暴に光る。

「え? もう少し休ませてあげましょうよ」

 アリスが泣きそうな隊員たちを庇う。

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