悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 その日の午後、ルークの元に一通の書簡が届いた。

「結婚式の招待状?」

 珍しく台所に立っていたアリスは、額に浮かんだ汗を拭った。

 ちなみに彼女、亜里の世界で言う納豆を作れないかと実験している最中である。

 栄養抜群の発酵食品・納豆がこっちでもできたら売れるかもしれない。売れたら、警備隊の収入が増える。

 収入が増えたら、あくせく働かなくても済むというぐうたらな算段である。

「ああ。アーロンの結婚式だ。ひと月後だと」

「随分早いわねえ」

 王族の結婚式はそれこそ何か月もかけて準備をするものだ。

「ソフィア嬢は無欲で、兄にあれこれ要求することもなく、ドレスもアーロンの母上のおさがりでいいと言うので早く準備ができたとあるが」

 ルークが手紙を読み上げる横で、アリスはハンと短く笑った。

「無欲ね。本当に無欲なら、第一王子に絞って婚活しないと思うけど。全部あの女の計算よ」

 意地悪く言うアリスに、ルークは眉をしかめた。

「どうしてそうソフィア嬢を悪く言う。将来の国母となるひとだぞ」

「あーはいはい。気にしなくていいわ、忘れてちょうだい。個人的に合わないだけだから」

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