悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 アリスは煮えた豆を藁に乗せて両端を縛る。ルークは理解できないという表情で作業を見ていた。

「女性はみんな、裏の顔を持っているものなんだな」

 ぼそっと呟いた言葉に、アリスはうなずいた。

「そうよ。みんな表の顔と裏の顔を使い分けているの」

 格好つけて言っても、彼女が持っているのはお手製の納豆である。

 亜里のときは、患者にも患者家族にも笑顔で丁寧に接するスーパー看護師だったが、一歩仕事を離れればぐうたらなオタクだった。

 休みの日は別人のように動かなかったものだ。

「……じゃあ、君も……」

「ん? 私?」

「いや、なんでもない」

 ルークは納豆には触ろうとせず、背を向けた。

「結婚式には君も招待されている。そして警備隊も城の警備を頼まれているから。全員で王都に向かうぞ」

「ええー。私留守番隊と一緒にお城にいるわ」

 仮病でも使えば問題なかろうとアリスは思った。

 第一、ソフィアの結婚式など、心の底からどうだっていいのだ。むしろあのあざとい顔を見る度うんざりする。

 城の警備はルークとジョシュアが取り仕切れば誰も文句は言わない。

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