悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「じゃあ、戸締りしっかりね。私がいなくても、お酒は一日一杯。下着は毎日取り換えて、水浴びも……」
「あーあーわかっていますよお妃様! 俺たちだって不健康に戻りたくはありませんからね」
口うるさく旅立ち前の確認をするアリスに、留守番を命じられた隊員たちは笑った。
「だって、心配なんだもん」
つい何か月か前まで、自堕落な生活を送っていた者たちだ。
なにかのきっかけで不規則な生活に戻ると、取り戻すのが大変になる。
頬を膨らませたアリスの肩を、カールがつんつんとつついた。
「お妃様、そろそろ行きますぜ」
「またあなたのへたっぴな風の魔法?」
「はっはっは。そうです。へたっぴなりに今回は気をつけて行きますよ」
大丈夫なのか。一抹の不安を抱き、アリスは歩き出す。
「じゃあね、みんな。私が帰るまで元気で!」
「お妃様も、お気をつけて!」
振り返って手を振るアリスに、隊員たちは笑顔で手を振り返した。
「野郎ども、すっかりお妃様になついてますな」
カールに案内された、一番大きな馬車に乗り込む。
と、そこには既に先客──ルークが座っていた。