悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「……で、結局ドレスはあるのか」
思いがけず、ルークの方から口を開く。
「実家が持たせてくれた花嫁道具の中にあったわ。シンプルだけど、変ではないと思う」
「そうか」
短い返事で、車内は沈黙を取り戻した。
王太子妃がみすぼらしい格好をしていては、王子も恥をかくので、気にしていたのであろう。
アリスは苛立ちに耐えかね、とうとう口を開いた。
「あのねえ、お金がないのは仕方ないでしょ。国が補助金くれないんだもん。名産品もないから税収も少ないし。そんなこと今さらどうにもならないわ」
「え?」
「あなたは王都に行って恥をかくのが嫌なんでしょ。だからこの数日ナーバスになってるんだわ」
王都に出向くたび、後ろ指を指されることをわかっているから、期限が悪いのだろう。
そう思いこんだアリスはビシッとルークを指さした。
「……そうやって、なんでも決めつけてかかるのは君の悪いところだ」
「ええ? じゃあ何よ。ハッキリ言いなさいよ」
カチンときた短気なアリスは、やはり相手の機嫌を取るということができない。
ケンカ腰な彼女と違い、ルークは以前よりも落ち着いた態度で返事をした。