悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「私ね、前世の記憶があるの」

「前世?」

「そう。私は前世で看護師だった。ここよりもっと文明が進んだ世界で、医療従事者として活躍してたわけ」

 亜里の世界では、この世界はゲームの中にあった。

 そこまで言わずとも、ルークを混乱させるにはじゅうぶんらしい。

「ということは前世が未来で……? 未来から過去に転生とかありえるのか?」

「時間軸は関係なくて、まったく別の宇宙から生まれ変わったと思った方がいいわ」

「ううむ……」

 輪廻転生自体、この世界ではメジャーな思想ではないので、ルークには理解が難しい。

 が、それが真実である以上、そう説明するしかなかった。

「だからね、看護師は寝たきりの患者さんのお世話もするわけよ。だから若い人のはほぼ見たことないな」

「ということは、君は前世でも恋人がいなかったと」

「うるさいわね」

 看護師としての亜里は充実していたが、プライベートはからっきしだった。

 いや、リアルな男性と縁がなかっただけで、ヲタ活は充実していたし、楽しかった。実物の若い男性は見ないが、薄い本ではたっぷり見た。知識だけは豊富だ。

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