悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
慣れないハイヒールで歩くアリスに、ルークが腕を差し伸べる。アリスは微笑み、腕を絡ませた。
本城に近づくたび、楽隊の音色が大きくなっていく。噴水がある庭園は、結婚式仕様に派手な花が一面に植えられていた。
「綺麗ねえ。うちには野菜ばっかりだもの、花も植えたいわ」
結婚式会場となる大広間の前室に入ろうとしたアリスはよそ見をしていて、足を滑らせた。ツルツルの床に慣れていないのだ。
「きゃあっ」
「アリス!」
体勢を崩したアリスに、ルークがすかさず手を伸ばし、支える。
「た、助かったわ。ありがとう」
しがみつくようにして見上げたアリスを、ルークは少し頬を染めて見返した。
「……言い忘れていた」
「ん?」
「今日は特別綺麗だ」
オッドアイに見つめられ、アリスの頬にも朱が走る。
自分の想いが一方通行ではないと知り、自信ができたのだろうか。ルークは今まで出さなかったような甘い言葉を吐く。
動きにくい肩が出たドレス、耳や首を飾る宝石。どれも質素なものではあるが、アリスを引き立てていた。