悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「申し訳ない。この度は、おめでとうございます」
ルークがアリスを守るように前に出て会釈する。
ソフィアもお辞儀をした。第一王子の妃として相応しいよう、訓練された動きだった。
「お前たち、こんなところで何をしているんだ。王族は前室で待機だろ。もう始まるぞ」
あとからやってきたアーロンが、呆れた顔でふたりを見下ろす。
「アーロン様、おふたりは長旅でしたから、お疲れなのでしょう。多少の遅れは見逃して差し上げて」
アリスを睨んだのとは別人のように柔和な表情で、ソフィアはアーロンを見上げた。
「お前は優しいな、ソフィア。そして誰より美しい」
アーロンはアリスの方をちらっと見て、嘲笑うように息を漏らした。妃に質素な装いしかさせられないルークを嗤ったのだろう。
「あ、でもルーク様はこちらにいてよろしいんですの?」
たった今何かに気づいた素振りで、ソフィアが首を傾げる。
「ん?」
「ルーク様の国境警備隊は警備をするためにおいでくださったんですよね。どちらの警備をなさるか、もうお命じになって?」
「ああそうか。忘れていた」