悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
主要な箇所の警備は、とっくに配置されているはずだ。
やる気満々できた国境警備隊は、城の敷地にも入ることが許されていない。
(最初から、私たちに仕事をさせる気なんてないんだわ)
アリスは怒りを抑えるため、拳を握りしめた。飾り気のない爪が手のひらに食い込む。
「そうだな……ソフィアはどこが彼らに適任だと思う?」
「ええとぉ」
無駄に人差し指をこめかみにあてたソフィアが、一瞬にいと口の端を上げたのを、アリスは見逃さなかった。
「そうだ! 私の大切な花壇を守っていただきたいわ!」
ソフィアの言葉に、ふたりは耳を疑った。
「花壇とは」
短く聞き返すルークに、ソフィアは屈託のない笑顔で答える。
「今日お二人が通っていらしたでしょ? 絨毯みたいにたくさんのお花が咲いていた特製花壇です。アーロン様が私のために、私の好きなお花を植えてくださったの」
「あの花壇を? さすがにそれは彼らに失礼だろう」
アーロンに言われ、ソフィアはしゅんとしなだれる。
「あ……そうですね。ごめんなさい。でもあの花壇は私の宝物なの。誰かに荒らされたら悲しいわ……」