悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
式が終わると、隣の大広間で食事会が催された。
食事会は立食形式で、決まった席はない。
中座し、ルークの元へ行こうかとアリスは考えていたが。
「ああ、美味しい……!」
隊員の健康のため、自分も粗食しか食べていないアリスは、宮廷料理人が腕を振るった料理を堪能していた。
何種類ものオシャレな前菜、手間のかかったソースがかかった肉や魚、そして普段は絶対に食べない甘いデザートを、彼女は人目もはばからず頬張った。
(つまらない式を我慢した甲斐があったわ)
衣装チェンジした主役ふたりに見向きもせず、アリスは幸せな時を過ごしていた。
アルコールは飲まず、料理を堪能するアリスを、ソフィアは主役の席からじっと見ていた。
主役はろくに食べることもできず、次々に現れる王族や貴族と挨拶を交わし、笑顔を振りまかねばならない。
「王太子妃殿下の方のご家族は?」
「しっ。あのひと庶民の出でしょ。ご両親には領地と爵位が与えられたみたいだけど、他は来られないわよ」