悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
可哀想な花嫁を演じ、しくしくと泣く真似をしはじめたソフィアに、アリスは決然と言った。
「ご冗談はおやめください。まさか、未来の国母になろうという方が、国民の命よりご自分の式典の方が大事だとはおっしゃいませんよね?」
ソフィアの嘘泣きがピタリと止んだ。代わりに周囲がざわめきはじめる。
(本性を現したわね)
顔を覆っていた手をゆっくり離したソフィアは、暗い目でアリスを睨んでいた。もちろん、アーロンからは見られない位置で。
「このような場所で薬を飲まねばならぬくらい、彼女は追いつめられていたのでしょう。国民の痛みに寄り添ってこその王太子妃さまではございませんか」
「くっ……」
おそらく、だが、彼女はアーロンに恋心を抱いていたのだろう。よく思いだせば、魔法学校で見た覚えがある顔だ。
当てつけのように式場でオーバードーズするのはどうかとアリスも思うが、ソフィアに対するざまあ展開に利用しない手はない。
そして、どんなに常識がなかろうと、彼女はもうアリスの患者なのだ。