悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「その通りだ。この娘にもし何かあったら、兄上は責任が取れるのか」
ラズロが加勢する。アーロンはぐっと喉を詰まらせるような音を出した。
「が、学校で私をいじめたひとが、よくもまあ……」
わなわなと唇を震わせたソフィアがうなる。
「あなただって、私の靴に画びょうを入れたでしょう? 被害者面して、実は裏で色々と陰険なことをしていたのを、私は知っていますからね」
だんだんと子供のケンカのようになりそうだったので、アリスは処置に戻ることにした。あとはラズロに任せておこう。
「誰か、手を貸して」
声をかけると、今まで汚いものを見るような態度だった貴族の何人かが手を上げた。
彼らに令嬢を壁際のソファに寝かせてもらい、側臥位のまま転がらないように支えるよう指示する。
アリスは胃管を高い位置で持ち、シリンジで水を注入した。
「空の桶を」
管を令嬢の顔より下に向けると、胃の内容物が桶の中に排出される。まだ溶け切っていない薬がその中に浮いていた。
出てくるものが透明になるまで繰り返し、胃の洗浄が終わった。