悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「コップに綺麗な水を」

 どこからか、メイドが水を持ってきた。

 アリスは召喚した黒い粉と白い粉を水に混ぜる。

「それは?」

 ラズロが尋ねてきた。どうやらアーロンとソフィアは何も言い返さず、じっと事の成り行きを窺っているらしい。さっきより患者に近づいてきていた。

(失敗したらいいと思っているんでしょ。おあいにくさま。すぐに処置すれば、オーバードーズで死ぬことはそうそうないんだから)

 亜里は何度も大量服薬をした患者を見たことがある。そのほとんどが自殺企図があった者だ。

 胃の中を洗浄すれば、ほとんどが次の日には退院できるくらいに回復する。

「これは活性炭と下剤です。残った薬を吸収し、腸へと排出させるのです」

 シリンジで黒い水を流し終えたら処置は終了。アリスは素早く胃管を引き抜き……。

「あっ」

 布を患者の鼻に当てるのを忘れていたせいで、抜けた胃管の先が上にはねた。

 黒い水が飛び散り、アリスのドレスにシミを作る。

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