悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「わ~! 初歩的ミス!」
たった一着のよそ行きドレスを汚してしまってへこむアリスがふと振り返ると、なんとすぐ後ろにいたソフィアのピンクのドレスにも黒シミができていた。
ドレスだけではなく、頬にも水がかかっている。
怒りで震えるソフィアに、さすがにこれはやばいと血の気が引いた。その時。
「見事である」
何者かが拍手をしながら近づいてきた。
威厳のある声がした方を見ると、国王がゆっくりとアリスたちの方に歩いてきていた。
誰もが床に跪くのを見て、アリスも慌てて髪や口の布を取り、深くお辞儀をする。
「その令嬢は助かったのだな?」
「は、はい。早急に胃を洗ったので、命には別条ないかと」
アリスの後ろでは、ソファの上ですやすやと寝息を立てていた。
「それはよかった。実に鮮やかな手つきであったぞ」
国王は遠くの席から望遠鏡でアリスの様子を見ていたらしい。
「いや、彼女はとんだ不届き者ですよ! 自分が貧乏王子に嫁がされた腹いせに、幸福な花嫁をわざと汚したんです!」