悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
昔から権力者の中には、不老不死の体を求める者が少なくない。
けれどアリスにはそこまでの技術はない。彼女のスキルはあくまで看護なのだ。
あまり期待されすぎても困るので、アリスは必死に万能ではないことをアピールする。
(ルークや副長を島流しにしたからかも)
自分の気に入らない者はたとえ息子だろうと、辺境の地に流し、ろくな補助金も与えない。それが国王という人物だ。
機嫌を損ねたら何をされるかわからないという恐怖が、アリスの胸に巣くっていた。
「あっ、王太子妃殿下ですわ」
ソフィアが別のドレスに着替えて入場したが、参列者たちは拍手もしない。
話題はアリスのスキルや処置の手順のことでもちきりで、主役は完全においてけぼりになっていた。
「うむむ。やはりアーロンの妃はあのような普通の娘ではなく、そなたにすべきだったかもしれん」
「えっ。いえいえいえいえ……まさかそんな。おほほ」
以前のアリスだったら、これを好機とばかりに第一王子の妃の座を狙いに行っただろう。
でももう、アーロンと結婚したいとは爪の先ほども思わない。