悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「近い……!」
国王の後ろに立ち上がったアリスは、ドレスの裾をつまんで駆け出す。
「どこへ行く?」
「怪我人が出たかもしれません。陛下、どうか夫が率いる警備隊に出動命令を」
訴えるアリスに、厳しい声が投げかけられた。
「これはルークとお前が自ら仕掛けたことじゃないのか。自分の評価を上げようと……」
前に出てアリスの行く手を塞ぐのは、アーロンとソフィアだった。
この期に及んで、評価がどうなどとほざく王子に、アリスはぶち切れた。
「誰が好き好んで自分の仕事を増やすか! 本当は、出来る限りゆるゆると暮らしたいんだよーっ!」
大声で本音をぶちまけたアリスの肩を、国王がぽんと叩いた。
「頼むぞ、ルークの嫁」
今の雄たけびは聞こえなかったことにしてくれるらしい。
アリスはこくんと頷いた。
「ちなみに私の名はアリスです。では、ごきげんよう陛下!」
ドレスの裾を大胆にたくし上げ、アリスは駆け出した。