悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 庭園は平和そのものだった。

 温かな日差しがたっぷりと降り注ぎ、油断すると寝てしまいそうだ。

 ルークはぼんやりと、アリスがいる城を眺めていた。

 今あそこではアーロンとソフィアが盛大な式を挙げ、その後食事会が催されている。

(嫌な思いをしていなければいいが)

 アリスが周りに何か言われても、自分が守ろうとルークは思っていた。

 が、アーロンの嫌がらせで離れ離れにされてしまった。

「隊長がしけた顔をしていると、隊員の士気が下がるぞ」

 広場じゅうを飾る花壇に隊員を適当に配置したジョシュアが、隣に来て言った。

「妃が心配か」

「はい……俺が嫌われているのはいいが、アリスが傷つけられるのは辛い」

「ははっ。あれが簡単に傷つくタマかよ」

 笑われて、ルークは肩の力が抜けるのを感じた。

 たしかに、ちょっとやそっとのことでへこたれるアリスではない。

「すぐに終わる。終わったらすぐに帰ろう……ん?」

 ジョシュアが空を仰いだ。遠くを見るような視線に、ルークは首を傾げる。

「どうかしましたか」

「何か聞こえなかったか」

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