悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
彼が見ているのは、街がある方向だ。ルークも耳をすませた。
「いえ、何も……」
横に首を振りかけたときだった。どん、と花火のような音がした。続いて風に乗ってきたのは黒い煙と、微かな悲鳴。
「花火が暴発でもしたのか?」
「いや、それならもっとひどい連続爆発になるはずだ」
花火はまとめて打ち上げ場に置いてあるので、ひとつ暴発したらすべてに引火する。
大量の花火に引火すれば、もっと派手な音がするだろう。
しかし聞こえる爆発音は低く、少し間を開けてだんだんと城に近づいてくるようだ。
「何かあったんだ」
「五人ほど偵察に行かせよう」
ジョシュアが足の速い者を選んでいると、広場に甲冑を着た騎士が駆けこんできた。
「敵襲、敵襲―っ!」
騎士は警備隊には目もくれず、王族たちが集まる大広間の方へ走っていった。
「敵だと?」
ルークは眉を顰めた。煙と共に、火薬の嫌な匂いが漂ってきて、隊員たちがざわめく。
「隊長、どうしますか」