悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 早くも臨戦態勢の隊員たちに、どう指示を出すか。ルークは即断できなかった。

 敵を見つけ出し、戦って捕縛すべきか。この花畑を守るべきか。

 (アリスならどうする?)

 ルークは無意識に、アリスの考えを求めていた。

(いや、ダメだ。俺が考えなければ。大事な決断を妻に任せておく情けない男になるな)

 自分を鼓舞し、ルークは声を張り上げた。

「敵と戦うのは、王都の兵の役目だ。俺たちは市民の救出に向かう!」

「おう! そうでなくちゃ!」

 集まってきた隊員がわっと盛り上がった。

 庭園を放棄し、出ていこうとする警備隊の後ろから、甲高い声がかかった。

「私も行くわ!」

 隊員たちが一斉に振り返る。そこには、ヒールの靴を脱ぎ捨て、裸足で息を切らせたアリスが立っていた。

 なぜかドレスに黒いシミができている。

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