悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「お妃様!」
アリスの登場に、やる気満々の隊員たちがますます沸いた。
「いや、君はここで待機してくれ。君に万が一のことがあると、救える人数が減ってしまう」
ルークはアリスの肩をつかみ、言い聞かせる。
「俺たちが市民をここに連れてくる。だから君はここで……」
彼の言葉を遮るように、突然の爆発音が至近距離で響いた。
ルークはアリスを抱き、身をかがめる。
もうもうとした煙が収まって見ると、城壁に穴が開いていた。
隊員たちは剣を抜き身構える。しかし、その穴から敵が侵入してくることはなかった。
「爆発は囮か。敵は別の場所から侵入を図って……いや、もう侵入しているかもしれないな」
ジョシュアが落ち着いた声音で言う。今まで幾度となく敵と戦ったのであろう。顔の傷が説得力を持っていた。
「あっ」
アリスが穴を指さした。ゆらゆらと、人影が現れたからだ。
「助けて……たすけ……」
爆発に巻き込まれたのだろうか。身体のあちこちから血を流した若い男が、こちらに助けを求めていた。