悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「早く寝かせて!」
それをきっかけに、怪我をした市民が穴からぽつぽつと助けを求めてやってきた。
「重症の者から運んでこい! 指揮は副長に任せる!」
怪我に光を当てて滅菌しながら、ルークは叫んだ。
隊員たちは頷き、ジョシュアに続いて穴から出ていく。
やがて続々と怪我人が庭園に運ばれてきた。
「まず傷口を洗わないと」
ドレスに似合わない姉さん被り姿で、アリスが言う。
「水を運ぶのにも一苦労だな。水の魔法が使える者がいればいいんだが」
ルークがおぶっていた怪我人をそっと地上に降ろすと、
「俺が力を貸す」
低い声がして、ふたりは振り返った。
水の魔法を使える第二王子ラズロが駆けつけてくれたのだ。
「ありがとうございます、殿下。では、怪我人の傷口をそっと洗ってやってくれますか。ルークは殿下についていって、片っ端から滅菌してくれる?」
「……わかった」
ラズロと話すアリスの目が少し輝いていた気がして、ルークは動揺しそうになった。
が、怪我人を見るとすぐに我に返る。