悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「早く寝かせて!」

 それをきっかけに、怪我をした市民が穴からぽつぽつと助けを求めてやってきた。

「重症の者から運んでこい! 指揮は副長に任せる!」

 怪我に光を当てて滅菌しながら、ルークは叫んだ。

 隊員たちは頷き、ジョシュアに続いて穴から出ていく。

 やがて続々と怪我人が庭園に運ばれてきた。

「まず傷口を洗わないと」

 ドレスに似合わない姉さん被り姿で、アリスが言う。

「水を運ぶのにも一苦労だな。水の魔法が使える者がいればいいんだが」

 ルークがおぶっていた怪我人をそっと地上に降ろすと、

「俺が力を貸す」

 低い声がして、ふたりは振り返った。

 水の魔法を使える第二王子ラズロが駆けつけてくれたのだ。

「ありがとうございます、殿下。では、怪我人の傷口をそっと洗ってやってくれますか。ルークは殿下についていって、片っ端から滅菌してくれる?」

「……わかった」

 ラズロと話すアリスの目が少し輝いていた気がして、ルークは動揺しそうになった。

 が、怪我人を見るとすぐに我に返る。

< 173 / 215 >

この作品をシェア

pagetop