悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

(これは外科手術でボルトを入れた方がいいも。でも、私にはできない)

 ぐっと唇を噛む。とにかく鎮痛剤で痛みを押さえてやり、足を曲げないように添え木をし、強く縛って固定した。

「おいっ、しっかりしろ! 死ぬなよ!」

 ジョシュアの叫び声が聞こえてそちらを見ると、内臓を損傷したのか、吐血して倒れている老人を軽症者の間で発見した。運ばれた時の見た目ではわからなかったらしい。

「どいてっ」

 人波をかき分け、アリスは城の手前まで裸足で駆ける。

 重症者の脇に到着するなり、窒息しないように喉に残る血液を吸引し、召喚した酸素マスクをつけた。

 内臓を透視していると、患者の呼吸が止まる。

「聞こえますかー? 頑張ってくださいねー!」

 アリスはすかさず心臓マッサージを始める。

(……ダメだわ。折れた肋骨が肺に達している。こっちも外科手術しかない)

 心が折れそうになった瞬間、透視をしていた視界に霞がかかった。ぱちぱちとまばたきしても改善しない。

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