悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
軽症者ゾーンには、運ばれてきたときにもう息がなかった者もシーツに横たわっていた。
ジョシュアがアリスの負担を軽減するため、少しでも助かる見込みがある者を重症者ゾーンに運んでいたのだ。
アリスは目の前が暗くなっていくのを感じた。
(わかっているわ)
自分は万能じゃない。看護師歴五年の若輩者だ。経験したこと、見たことがある処置しかできない。
(やっぱり、私は思い上がっていたんだ……)
誰かの命を救おうなんて。
神様でもできないことを、どうしてできると思ったのか。
アリスの目から光が失われていく。もう少しで気まで失いそうだ。
「誰が役立たずだ」
しゃがれた声が、アリスの意識を繋ぎ止めた。
「そんなことは、自分がちょっとでも誰かのために働いてから言いやがれ!」
怒鳴ったのは、ジョシュアだった。
「この人は俺の命を救ってくれた。生きがいを与えてくれた。侮辱するなら俺が許さねえ!」
アリスの目に光が戻った。彼の声は、しっかりと彼女の鼓膜に届いていた。