悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「国王陛下!?」
マントを翻して現れたのは、なんと国王だった。彼もまたソフィアには見向きもせず、ルークの元に向かう。
彼の親衛隊が巨大な箱を運び、ルークの前に下ろす。その後ろから、ぞろぞろと国王の侍医とメイドがついてきた。
「城の物資だ。好きに使え。そしてこの者たちも手伝うぞ」
空いた箱の中には包帯やこっちの世界の薬が入っていた。
驚いたルークは目をしばたかせる。
「火の魔法しか使えないわしは、これくらいしかできん。ここは頼むぞ」
「……御意」
ルークが深くお辞儀をしたとき、壁に空いた穴の方向がにわかに騒がしくなった。
「どけどけっ。アーロン殿下のお通りだっ」
なんと、戸板に乗せられたアーロンが彼の部下に運ばれてきた。
「殿下!」
ソフィアがますます青くなる。
アーロンはアリスが飛び出したすぐ後に、馬で街へ行った。無論、敵を見つけて鎮圧するためだ。
派手な赤い甲冑を身に纏った彼の肘が破れ、出血していた。他にも多数の切り傷がある。