悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「ううっ。ソフィア、俺はもうダメかもしれない……」
「おい、まず殿下の手当てをしろ」
高圧的な態度で、アーロンの親衛隊長がアリスに怒鳴った。
「大きな声を出さないで」
アリスは降ろされたアーロンの体を透視する。
敵と斬りあったのだろう。しかし全体的に傷は浅く、骨折もない。つらそうな表情の割には大丈夫そうだ。
「大したことないわね。誰か、殿下の止血を。私はこっちの重症者を先に」
「なんだと!? お前っ、殿下を後回しにするつもりか!」
親衛隊長の横に飛び出てきたソフィアも、調子を合わせた。
「トリアージって知らない? 殿下は止血しておけば大丈夫、絶対助かるの。もっと命に関わる怪我をしている人が、ここにはたくさんいるのよ」
「ウソよ! あなた、殿下が身罷られれば自分の夫が王位に近づくと思って、わざと放置するんでしょ」
アリスの脳内でプチンと音がした。気が付いたら、右手が空を切っていた。
「いい加減にしなさいっ!」
ペチンとマヌケな音がした。
アリスがソフィアの頬を打ったのだ。