悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「あんた、未来の王妃でしょう! そんなことでどうするの!」
打たれた頬を手で押さえたソフィアの目に、涙が浮かぶ。
「いや~、このひと私をぶったぁぁ~」
「勝手に泣いてなさい! 誰も可哀想だなんて思わないからねっ!」
アリスはアーロンもソフィアも置き去りに、重症者の処置に回る。
「陛下、いいのですか。あいつらとんだ無礼者です」
「ん? 彼女は至極まっとうなことを言っているように、わしには聞こえたぞ」
騒いでいた親衛隊長は、国王にひと睨みされてスン……と口をつぐんだ。
「王太子妃よ、そなたはまだまだ学ばなければならんことがありそうだな」
大げさに泣きわめいていたソフィアも、静かになった。
「痛いよ~血が出たよ~」
「大丈夫ですよ、兄上。明らかに浅い傷だ」
アーロンの傷を洗浄しながらラズロがため息をついた。
「ルークはいい花嫁をもらったな」
彼の呟きは、ルーク本人には聞こえていなかった。