悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「ん? ということは、ふたりが勝手に陛下に見捨てられたと思いこんでいただけで、実はそうじゃなかったってことですよね?」

 アリスが首を傾げる。

「じゃあどうして、国境警備隊には補助金がほんのちょっとしか与えられないのです? あの地は特産品もなく、税収が少ないのです。そのわりには、私の実家にはちゃんと補助が出ている」

 アリスの要望にしたがって様々な物資を送ってくれるのは、実家が潤っている証拠だ。

「私が来る前、みんなろくな物を食べていませんでした。今は自給自足できていますが、家畜のエサや肥料でいっぱいいっぱいでメイドも雇えないし、正直このままではキツイです」

 あっけらかんと警備隊の現状を訴えるアリスに、失笑する声があちこちから聞こえた。

 お金がないということは、ここに座っている人間たちにとって、よほど恥ずかしいことらしい。

 恥よりも、アリスはこれからの生活のことが気がかりだった。

 もし国境を脅かされる事態になれば、隊員たちは家畜の世話や農業をする時間がなくなり、また貧しい生活に戻ってしまう。

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