悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「なんだと? 私は毎月十分な額を届けるように申し付けてあるはずだが……」
「これがこの数年の帳簿です」
ルークが懐からさっと何かを取り出した。
「なにその巻物」
「家計簿だ。いつも持ち歩いている」
「ウソ⁉ 初めて知ったわ」
ルークは巻物を国王の前まで歩き、両手で手渡した。
国王はそれを広げて目を通し、ぽかんと口を開けた。
「信じられぬ。余が言い渡した額の半分も渡されていないではないか」
「まあ。誰に一任していたのです?」
「それはもちろん……」
国王の視線を、全員が追った。そこにいたのは、真っ青を通り越して顔が土気色になっているケルト財務大臣だった。
「ケルト。どういうことだ」
「あ、う、その……」
「ルークに渡すはずの金をネコババしたのでは? ちゃんと調査した方がよさそうですね」
ラズロが呆れた表情でケルトを冷ややかに見た。
「よし、綿密に調査しよう。牢の中でな。連れていけ!」
奥に控えていた国王の親衛隊が、ケルトを連行していく。彼は抵抗せず、とぼとぼと彼らについていった。