悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「私、辞退します」

「ん?」

「正直、私には未来の王妃とか無理です。あんまり忙しいとイライラして当たっちゃうこともあるし、権力を手にしたら私腹を肥やしたくなっちゃいます」

 沈黙していた人々が、一気にざわめいた。

 まさか、国王の推薦を断る人物が登場するなど、つゆほども思ったことがないのだろう。

「それは、王妃とはなんたるかを今から勉強してだなあ」

「今から王妃としてのあり方を勉強するのであれば、ソフィア嬢でもいいのでは?」


 立ち尽くしていたソフィアが、ゆっくりと顔を上げた。

 目には驚きと疑いが滲んでいる。

「私は本来、自分本位な人間です。そして、とても怠け者なのです」

 アリスは胸を張って、部屋中に響き渡る声で言った。

「ありがたい申し出ですが、荷が重いですわ。私はできるだけ、ゆるゆると暮らしたいのです。陰謀や策略や、嫉妬、しがらみ、そういうものとは無縁でいたい」

 彼女の信じられない返事に、周囲はしばし呆気に取られた。

「いやいやいや、お嬢さん、よく考えてみろ。未来の王妃だぞ。ルーク殿下は未来の国王になれるんだぞ」

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