悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「陛下、仕方ないですわよ」
「そうだな。では、誰に王位継承権を渡すかは、もう少し様子を見てから決めるとするか」
深い息を吐く音が、アーロンから聞こえた。まだ望みが断たれたわけではない。
「信じられねえ。あんたら、バカだぞ。大バカだ」
「あら副長、やっと気づいたの? 私たちおバカなのよ」
アリスはジョシュアの言うことなど聞かず、ケラケラと笑った。
(これでいい。王妃候補になどなってしまえば、今以上に自由がなくなってしまうもの)
しきたりやしがらみにがんじがらめにされるより、田舎でのほほんとした生活をしたいのだ。
「ね、ルーク。早くみんなのところに帰りましょう」
「ああ。たくさん土産話ができた」
ふたりは顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。